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高松さんぽ(令和8年度)

更新日:2026年5月7日

「森と炭素の道」(5月号掲載分)

この度、高松市が脱炭素先行地域に選定されました。その柱の一つが、早明浦(さめうら)ダムを擁する水源地・高知県嶺北(れいほく)地域と、利水地である高松市が連携し、森林由来のJ-クレジットを創出・活用して市内の脱炭素化を進める取り組みです。サンポート高松エリアをはじめとする市内の事業者が、このクレジットを活用して排出量の削減や相殺(オフセット)を図る仕組みは、都市の経済活動と山の森づくりを一本の線で結び直します。

私たちは半世紀以上にわたり、香川用水がもたらす「水の恩恵」を受けてきました。50年前に完成した香川用水は、渇水の不安を抱えてきた香川の暮らしと産業を支え、同時に県境を越えた信頼と協力関係を育んできました。今回の連携は、その「水で結ばれた関係」に、新たに「森と炭素という新しい価値」を付加する試みだと言えます。
森林由来のJ-クレジットは、適切な森林整備によって吸収・固定されたCO2の価値を「見える化」し、必要とする側が費用として支えることで、森に再投資の資金を回す仕組みです。嶺北の森が健全に保たれれば、CO2の吸収だけでなく、水源涵養(かんよう)や土砂災害リスクの低減にもつながります。一方、高松の事業者にとっては、地縁のある水源地の取り組みに参加しながら、脱炭素の取り組みを具体的に前へ進めることができます。
この事業の母体となる「もりとみず基金」の役割も重要です。水を受け取る側が、水を育む森の価値に対して継続的に関わり、支える。基金はその意思を制度として形にして、行政や企業、地域をつなぐ「器(うつわ)」になります。短期の寄付で終わらせず、森の手入れ、人材、計測・認証といった地道な工程を支える「器」があってこそ、クレジットは信頼され、循環が生まれます。
香川用水が「水の道」だとすれば、今回の取り組みは「森と炭素の道」です。水源地と都市が互いの課題を共有し、価値を交換しながら未来をつくる。県境を越えた協力の好事例として、高松の脱炭素が嶺北の森を元気にし、その森がまた高松の暮らしを支える。そんな循環型システムを着実に育てていきたいと思います。

「芸術とスポーツの融合」(4月号掲載分)

高松で高松国際ピアノコンクールが熱を帯びる頃、世界はミラノ・コルティナオリンピックに沸いていました。片や鍵盤の上で競い、片や氷上や雪上で競います。舞台も道具も違うのに、私たちが受け取る感動の質は驚くほど近いと感じます。極限まで磨かれた技術に裏付けられた表現に心を揺り動かされるのです。

近代オリンピックの父クーベルタンは、スポーツを単なる勝敗の争いに閉じず、芸術と結びついた総合的な人間教育として構想したと言われています。実際、かつてのオリンピックには芸術競技が存在し、身体の鍛錬と精神の創造が同じ理念の下に置かれていました。いま、その思想は形を変えて私たちの前に戻ってきているように思います。

第6回高松国際ピアノコンクールは、過去最多の応募者を集め、その中から予備審査を経て、1次、2次、3次審査を通り選び抜かれた本選出場者5人は極めてレベルが高いピアニスト達でした。多様な文化的背景をもつ若い才能が、示された課題曲で競い合い、本選では5人がそれぞれ異なる作曲家の協奏曲(チャイコフスキー、ブラームス、ラフマニノフ、サン・サーンス、ベートーヴェン)を弾き、打鍵の音色や間合い、音楽の構築力などでそれぞれの見事な個性の競演が見られました。

一方、冬のオリンピックで最も“融合”が見えやすい競技は、フィギュアスケートではないでしょうか。氷上のエッジワークやジャンプというスポーツの精度が、音楽と振り付け、身体表現と結びついて一つの作品になります。日本勢の活躍は、技の難度だけでなく芸術的作品としての完成度でも世界を魅了し、大きな感動を与えました。

芸術もスポーツも、頂点に立つには「自分の限界を越える創造的営み」が必要であることで共通性があります。そして同時期に祭典が繰り広げられた高松のホールとミラノのリンクは、同じ思いを私たちに投げかけます。第6回高松国際ピアノコンクールの青柳晋審査員長の総評から引用します。「国や言語が異なっても美しいものを尊いと感じる心に違いはありません」

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