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令和元年12月

更新日:2018年3月1日

教育長ひと言

教育長が、教育に関する想いを「この月に想う」と題して綴ったコラムです。

「十二月に想う」 私の心根にしっかりと残るわが恩師

 中学校3年の時の学級担任の先生は、指示棒の代わりに、大きな三角定規を常に持ち、メタボリックな体型で、ペタコンペタコンとスリッパの音をさせながら歩いていた。先生との思い出は、その始まりが「しまった。」と思うことばかりである。さらに、私は苦手が先か、嫌いが先かは分からないが、先生の担当する数学があまり好きではなかった。
 当時、試験発表があると、一週間前に教室にテスト範囲が書かれた紙が貼られた。にもかかわらず、試験の前の日になって、ようやくそれをメモするために、私は放課後の教室にいた。すると、廊下からペタコンペタコンという先生の足音が聞こえてきた。「しまった。」と思ったが、もう逃げることも、隠れることもできずに、憮然とした態度で教室にいた。その私に先生は、「今頃、何をしているのだ。」と言われた。おずおずと「試験範囲を写していました。」と答えた。先生は、一言ずつ、ゆっくりと、「明日は、数学が、あるな。期待して、おこうかな。」と言い、笑顔で、私の肩に手をやった。その晩、他の教科は捨てて、数学だけを必死に勉強した記憶がある。
 こんなこともあった。図形の証明の授業で、先生は幾通りかの解き方を考えさせた後、その中の一つの方法について説明をしていた。私は、すでにその解き方をしていたので、説明には耳を傾けず、他に証明する方法はないものかと考えていた。先生から見ると、全員が前を向いて説明を聞いているのに、一人だけ下を向き、視線が自分にない生徒がいたのである。ふと、先生の声が途切れたと思った瞬間、大きなお腹と三角定規がうつむいている私の視野に入った。「しまった、叱られる。」と身を強張らせ、目をつぶった。しかし、少しの間をおいてから聞こえてきたのは、先生の声ではなく、ペタコンペタコンと遠ざかっていく足音だった。そして、再び、説明の声が聞こえ始めた。私は、「なあんや、びっくりさせるなよ。」と心の中でつぶやき、懲りずに、もうすぐ解けそうな先ほどの問題と向き合った。
 しばらくして、新しい解き方ができ、頭を上げた私に、「今考えていた解き方を、前に来て説明しなさい。」と言われた。心がかっと熱くなった。何とか説明を終え、先生の柔和な瞳に見つめられた時以来、先生を、そして、数学を大好きになった。
 あの時、私が何をしているのか、先生は確認に来たのだ。前を向いていない、説明を聞いていないと分かった時にすぐに叱るかどうかの判断は、分かれるところだろうが、結果として、先生の選んだ行為は、私の人生にとって重要な転機になったことは確かだ。叱るタイミングは大変難しいが、教育のプロとしての教師の力量が問われる一瞬でもある。
 そして、教師の言動は、些細なことであっても、目の前の子どもにとって、人生を左右するような大きな影響を与える可能性を含んでいるということを私は知った。
 先生は、生涯、数学の教師として教壇に立ち続けた。定年退職後のわずかな時を経て、先生は亡くなられた。しかし、子どもの心の中まで愛情をもって見つめ、いつも前向きにさせる先生の温かな眼差しは、今も私の心根にしっかりとある。

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