伊方原発の再稼働の再考と新規制基準の見直し及び実効性のある避難計画を求める意見書 |
本市は、四国電力伊方原子力発電所から直線距離で約185キロメートルに位置している。 伊方原発は、内海に設置された唯一の原発であり、その5キロメートル先には、日本で最大の活断層、中央構造線があり、南海トラフ大地震とあわせて大地震が起こる可能性が非常に高いと指摘されている。 4月14日以降、今なお余震が続いている熊本地震では、5月31日までに、震度1以上を観測する地震(有感地震)は、熊本県熊本地方・阿蘇地方、大分県西部・中部において1,600回を越している。また、本震時には、伊方原発が隣接する八幡浜市保内町でも震度5弱という強い揺れを観測した。京都大学(地震地質学)の林愛明教授は、「今回ずれた断層の延長線上にひずみがたまり、大分県側でマグニチュード7級の地震が起きることも否定できない。四国側の中央構造線が動く可能性もある。」と指摘している。 地震が起こると、震源になった断層にたまっていたひずみは解消されるが、逆に、その周囲や延長線上にある断層のひずみが増えることがあり、その影響は、離れた地域にも及ぶこととなる。 一たび伊方原発で重大事故が起これば、風向きによっては、本市にも放射性物質は降り注ぎ、本市が力を注いでいる観光産業や農林水産業に甚大な影響を与えるどころか、市民の安心・安全な生活を守るという地方自治の根幹を揺るがす事態となる。 東京電力福島第一原発事故の発生から5年が経過し、いまだに福島県民の多くの方が避難され、全村避難区域も解消されず、放射能で汚染された廃棄物の廃棄処分も決定していないなど、終息するには、まだまだ長い月日と経費がかかるとされている。 伊方原発については、原子力規制委員会は、新規制基準の中で「世界で一番厳しい基準」に適合すると判断したが、一方では、規制委員長は「規制委員会は、適合性の審査をするだけで、合格しても事故が絶対に起こらないとは言えない。」と強調し、原子力発電の安全管理は電力会社に努力の継続を求めている。 また、3月9日に原子力規制委員会が安全審査で合格とした高浜原発3・4号機に対して「再稼働の差し止めを命じる仮処分決定」の判決を出した大津地方裁判所では、「過酷事故による影響は極めて広く、地方自治体が個別に策定する防災対策では不十分であり、避難計画は国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定される必要がある。」としている。 こういった情勢の中で、伊方原発で過酷事故が起きた場合、香川県内でも重大な影響を受ける可能性がある自治体が存在し、伊方原発の再稼働に際しては、30キロメートル以上離れているエリアであっても、住民の同意を得るべきである。 また、国においては、原子力事故による放射能被害等、過酷事故の広範囲に及ぼす影響に鑑み、周辺自治体を含めた実効性のある避難計画を策定するべきである。 以上のことから、次の事項を強く要望する。 記 1 伊方原発3号機の再稼働については、再考すること。 2 原子力規制委員会がまとめた新規制基準に、30キロメートル以上離れているエリアの住民が重大 な影響を受ける可能性が高い周辺自治体の同意を盛り込むこと。 3 国においては、原子力事故による放射能被害等、過酷事故の広範囲に及ぼす影響に鑑み、周辺自治 体を含めた実効性のある避難計画を策定すること。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 平成28年6月23日 高松市議会 衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 宛 内閣官房長官 経済産業大臣 環境大臣 |