地中熱の利用について
★地中熱利用とは
地表からおよそ地下200mの深さまでの地中にある熱(地中熱)のうち、深さ10m以深の地中温度は季節を問わず安定しており、この安定した熱エネルギーを地中から取り出し、冷暖房や給湯などに利用することを「地中熱利用」と呼んでいます。
地中熱利用は、「太陽光や風力と異なり天候や地域に左右されない」、「空気熱利用と異なり大気中へ排熱を出さない」、「省エネルギーで二酸化炭素の排出量を削減できる」などのメリットを有し、ヒートアイランド現象の緩和や地球温暖化対策への効果が期待されています。
★導入の方式
ヒートポンプを利用する方式のほか、地下に埋設したパイプ等に外気を通し熱交換する空気循環、不凍液や地下水を循環させて熱交換する水循環、土間床を介した直接的な熱伝導などの方式があります。
このうち、ヒートポンプを利用する方式は、わずかな電力で地中の熱を利用することができ、投入したエネルギーより大きなエネルギーを獲得できる優れた技術です。また、地中熱は、冷房時には地上より冷温で、暖房時には地上より高温であり、季節を問わず外気との温度差があることから、より効率的にエネルギーを利用することができます。
(出典:「地中熱ヒートポンプシステム」(環境省))
★導入実績
環境省 平成30年度地中熱利用状況調査の結果について(外部サイト)
★導入効果
(1) 省エネルギー
地中の温度は通年で安定しており、地中に含まれている水は空気より熱容量が大きいことから、地中熱ヒートポンプは冷暖房等の効率が高く、省エネルギーが期待できます。
※ 熱容量:物質の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量。この数値が大きいほど、温度上昇に多くの熱量を
必要とし、蓄熱能力が高いことになります。同じ体積で比較すると、水は空気の3000倍以上の熱容量が
あります。
(2) 二酸化炭素の排出削減
地中熱利用ヒートポンプは電力のみで稼働するため、石油やガスを用いた暖房や給湯と比べ地球温暖化の原因となる二酸化炭素を直接排出しないこと、また、空気熱源ヒートポンプ(通常のエアコン)よりも高効率で消費電力が少ないことから、温室効果ガスの削減につながります。
(3) ランニングコストの低減
地中熱利用ヒートポンプ設備の導入については、地中熱交換井の掘削に費用がかかるため、通常の冷暖房システムよりもイニシャルコストが高くなる傾向があります。
一方で、熱源となる燃料や電力が不要であること、基本的にメンテナンスフリーで耐用年数も長いことから、他の冷暖房設備に比べランニングコストが低減できます。また、設備導入に関して様々な助成制度もあり、これを活用することにより、他の冷暖房システムに比べて全体のコストを抑えることができます。
(4) ヒートアイランド現象の緩和
地中熱ヒートポンプは、冷房時に発生する熱を大気中に放出する空気熱源ヒートポンプと異なり、温排気を大気中に排出しないことから、都市部に多数設置されている空気熱源ヒートポンプが地中熱利用のものに置き換われば、ヒートアイランド現象の緩和につながります。
★参考資料
環境省 地中熱利用ガイドライン改訂版 公表画面(外部サイト)