教育長が、教育に関する想いを「この月に想う」と題して綴ったコラムです。
新年度がスタートして一か月が過ぎようとしています。出勤途中に、小学1年生が交通安全の黄色いカバーを付けたランドセルを背負い、上級生や友だちと通学している様子を見かけることがあります。元気いっぱい笑顔で登校している1年生の姿を見ると、大人も「頑張らなくっちゃ」という気持ちになるとともに、7歳の交通事故が5月ごろに特に多いという記事を目にするにつけ、事故には十分気を付けてほしいと願うばかりです。
子どもたちの通学路で、「入学おめでとう」の看板とともに、色とりどりの花を咲かせたお祝いの花壇を見かけます。昨年度のまだ寒い時期に、この道を通った際、地域の大人や子どもたちが入り混じってチューリップの球根やパンジーの苗を植えている姿を見かけましたが、春になり子どもたちの入学や進級を祝うように、満開の花を咲かせてくれています。この地域の方々の「子どもたちが元気に健やかに育ってほしい」というやさしい思いが伝わってくるようです。
私自身も、いろいろな花を育てたり生けたりするのが好きで、自宅の玄関や職場のテーブルには、庭で育てたお花を毎日飾って楽しんでいます。以前は祖母の影響で、中学2年生から15年間ほど近所の生け花教室に通っていたこともありましたが、今は、身近なお花を本当に気軽にグラスやティーカップに生けて楽しんでいます。
花の姿に見とれていると、時折、昨年4月に亡くなられた星野富弘さんのハナショウブの詩画を思い出すことがあります。
「黒い土に根を張り どぶ水を吸って なぜきれいに咲けるのだろう
私は 大ぜいの人の 愛の中にいて なぜ みにくいことばかり 考えるのだろう」
(星野富弘 『鈴の鳴る道』 p23より)
さて、花にまつわる教員時代の忘れられない風景がいくつかあります。その一つは、私が市内郊外の中学校に異動したばかりで、1年生の担任をしていた頃のことです。入学式の翌日に、クラスで一番大きな男の子が、汗をかきつつ教室に入ると同時に「先生、これ、うちの母さんが教室に飾ってください・・・て」と言って、新聞紙で包まれた抱えきれないほどのお花を渡してくれたことがありました。家の庭や畑で育てているお花を、クラスのために持たせてくれたお母さんのお気持ちがうれしかったのを覚えています。
それから10年余りが経ち、今も記憶に残っているのは、中学校の学年団の職員室前に、毎週月曜日の朝になると、きれいに生けられているお花です。学年主任の女性の先生が、職員室前のスケジュール黒板に各クラスへの伝達事項を楷書の美しい文字で書き、そこに書かれた連絡事項を記録しに来る生徒のために、また、職員室前を通る生徒たちのために、いつもきれいなお花を飾ってくださっていました。時には男子生徒を大声で叱るような迫力のある先生なのですが、当時学級担任をしていた私は、そのギャップにあこがれるとともに、この花のある風景を見るのが大好きでした。
それからまた20年余りが経ち、同じ学校を学校訪問で訪れる機会がありました。校舎は建て替えられていましたが、玄関付近に季節の美しいお花が生けられていて、「うわぁーきれいですね。」と言うと、「そこは、いつも私が生けているんですよ。」と男性の校長先生が照れくさそうに、笑顔で答えてくれました。学校の中の花のある風景も、時代とともに変遷を遂げてきたような気がしました。
今年の4月から高松第一学園(小中学校)で、外国にルーツのある児童生徒のための日本語教室がスタートしました。この新たな教室の名称は、学園の先生方が名付けてくださった「ひまわり」です。
大地に根を張り、夏の青空に胸を張ってしっかりと立つあの向日葵(ひまわり)のように、職員の先生方や支援員の方々、そして友だちからの温かな言葉のシャワーをいっぱい浴びて、子どもたちには言語や生活習慣の壁を越えて、元気にたくましく学んでほしいと願っています。
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