更新日:2025年5月1日
今年も桜の季節を迎え、いよいよ4月から幼稚園、こども園、保育所、小学校、中学校、高等学校、大学へ入園・入学する皆さん、また、一つ学年が上がる皆さんにとっては、何だかワクワク、ドキドキする時期かと思います。新しい学校はどんな風だろう、新しい先生はどんな人だろうと思いを巡らせているかもしれません。
海外では、多くの国で9月に入学や新しい学年を開始する中、桜の花を始めとする色とりどりの花や緑の木々に囲まれ、やわらかな陽ざしの中で新年度のスタートを切るのは、日本特有の文化かもしれません。
(絵 佐々木 啓祐先生)
ワクワク、ドキドキするのは子どもたちだけではありません。
この時期になると、自分が教員として初めて学級担任をした頃のことを、ふと思い出すことがあります。専門的に教育のことを学ぶ教育学部出身でなかった私は、教員として、自分にどこまでのことができるのかもわからず、ただ不安な気持ちでいっぱいだったことを覚えています。中学1年生の担任として、学年始めの様々な準備を1から10まで先輩の先生方に教えていただきながら行い、希望をもって入学してくる1年生を、とにかく明るく迎えたいという思いのみで、学級担任としての初日、入学式を迎えました。
ガラガラと教室の扉を開け、緊張した面持ちで1年8組の教壇に立ちました。新しい担任や友だちとの初めての出会いで、瞳をキラキラ輝かせる中学1年生を前に、うれしい気持ちでいっぱいなのに、緊張感のあまり、全く思い通りに話ができず、しかし、笑顔だけは忘れてはいけないと、汗をかきながら入学式のことや中学校生活について説明したことを覚えています。教室の後方で見守る保護者の方々への話も、もちろんスムーズにはいかず、若さと勢いのみしか伝わらなかったのでは・・・と思う、担任1年生の頃のほろ苦い思い出の一つです。
それから長い年月が過ぎ、退職の日を迎えた朝、県庁の職員をしている初めて担任をした当時の1年8組の教え子が、わざわざ手紙を届けてくれました。その手紙には、私と初めて出会ったあの日のことが鮮明に描かれており、入学式の帰り道でお母さんと交わした会話の内容も書かれていました。「いい先生でよかったね。」と、経験の浅い、未熟な担任に思いを寄せてくれたお母さんの思いやり、心優しい気持ちを38年経って初めて知り、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
(絵 佐々木 啓祐先生)
思えば、教員生活を振り返るにつけ、出会った子どもたちや保護者の方々に、自分が教員として育ててもらったのだ、生かされてきたのだと気づく日々です。教職という仕事は、人に何かを教える以上に、日々、子どもたちや周りの人々から様々なことを教えられる仕事なのかもしれません。
今年も、市内の小・中学校で、あの日の私のように初めて教壇に立つ先生が多くいることでしょう。まっすぐに子どもたちを見つめる瞳に期待を込めて、心からエールを送ります。