2023年度 コレクション展2
コレクション展
〔常設展示室1〕物語る―記録、ストーリー、歴史
美術をめぐる研究や批評は世界中で編み続けられており、私たちはこれら歴史の文脈の中で名画名作とされる作品を見知り楽しんでいます。本展ではまず、こうした美術史そのものを創作のモチーフとする作家を紹介します。森村 泰昌、橋爪 彩等の作品に接すれば、驚きや新鮮さを持って美術作品への解釈が膨らむことでしょう。
また実際に起こった出来事をモチーフとした作品も枚挙にいとまがありません。それは人間の行為の痕跡・記録であり、美術として物語られることによって歴史となり継承される可能性を持つためです。日本において、太平洋戦争中に軍の委嘱によって画家たちが描いた「戦争画」という痕跡がタブー視される時期も長くありましたが、平川 恒太は現代人としてそれを「ケイショウ(形象/警鐘/継承)」することを試みています。
物語とは、個人だけではなくより多くの人々が介在することによって饒舌に紡がれていきます。それがもし祭りのようにひととき現れ消えていくものであれば、なおのこと人々の想像力を喚起させるものです。クリストや川俣 正はカンヴァスを建築物や大地に移し、多数の人間が参加するプロジェクトを企てました。これを実現させるための企画書やドローイング、メモなどはその一過的な「作品」が終わればこそ、むしろ見る者はそれぞれに物語を伝承させていくことでしょう。また、鴻池 朋子の《風が語った昔話》は、作家とともに他者が手を携えて生まれた手芸による手仕事であり、実際に触ってみることもできます。私たちはそうして物語の中の一員になることもできるでしょう。
本展のこれら作品を通して、美術の物語に入り込み、それぞれ物語りの枝葉を伸ばしてお楽しみください。
画像:鴻池朋子《風が語った昔話》2015年
制作協力:ハンズクラフト秋田
(高橋ムツ・沼田容子・渡邊啓子・佐藤久美子・東海林裕子)
photo:Nagare Satosh
〔常設展示室2〕師弟と家族-太田儔 を中心に
太田 儔には生涯4人の弟子がいました。筆頭の大谷 早人(1954年生、高松市在住)が漆芸に出会ったのは、当時男木中学校に美術教師として赴任していた儔の宿舎での作品づくりだったと言います。そして、高松工芸高校卒業後に弟子入りし、「籃胎蒟醤」の技法に独自の創意工夫を加え、2020年には重要無形文化財「蒟醤」保持者に認定されました。また、辻󠄀 孝史(1973年生、高松市在住)は、漆芸家であった父・辻 照二が病に倒れると、儔の元に弟子入りしました。孝史の先祖は、京都で蒔絵を学んだ石川県出身の初代辻󠄀 北陽斎であり、儔から多くを学ぶとともに先人たちの作品研究を重ねて制作しています。
今回の展示では、パートナー、師弟、家族に焦点を当て、伝統を受け継ぎ、切磋琢磨する中で制作された8作家による作品26点を紹介します。
画像:太田 儔《籃胎蒟醤 茶箱 浅春》2004年
撮影:高橋 章
展覧会基本情報
会期:
2023年6月24日(土曜日)~9月18日(月曜日・祝日)
会場:
1階常設展示室
休館日:
月曜日(ただし、7月17日(月曜日)・9月18日(月曜日・祝日)開館、7月18日(火曜日)休館)
開館時間:
午前9時30分~午後5時
(ただし、特別展開催期間中(7月15日~9月18日)の金曜日・土曜日は、午後7時まで)
主催:
高松市美術館
観覧料:
【一般】200円(160円)
【大学生】150円(120円)
【65歳以上・高校生以下】無料
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳所持者(または障害者手帳アプリ「ミライロID」提示)は入場無料
※高松市キャンパスメンバーズ制度加盟大学等の学生証所持者は無料
※共通定期観覧券についてはこちらから
お問い合わせ先:
高松市美術館
電話:087-823-1711
関連イベント
ギャラリートーク
開催日時:
2023年9月2日(土曜日)午後2時~
会場:
1階常設展示室
聴講料:
無料(ただし観覧券は必要です)
