更新日:2021年12月14日
教育長が、教育に関する想いを「この月に想う」と題して綴ったコラムです。
冬の訪れを感じる先月末に、子どもたちの笑顔のために、力を尽くされている人々が集う二つの会に参加しました。一つは、「第24回高松市青少年健全育成市民のつどい」で、もう一つは、「ポストコロナを見据えた子育て支援の未来を考える」と題した「2021高松市民大学」です。
どちらの会にも、子どもの健やかな成長を願って、献身的に、見守り活動や子育て支援、子ども食堂の運営など具体的な行動をされている皆さんが集い、更なる充実を目指そうとする内容でした。子どもたちが、保護者だけでなく、多くの方々に見守られながら育てられていることに大変有難く思いました。
その会の中の、ある方が会長を務めている地域の会に出席した時のことです。ご挨拶の中で、地域にお住まいの九十歳近くになる方が、体調が良い時には通りに出て、子どもたちの下校を見守ってくれていることをお話しされました。手元には、その方から毎月届けられる、見守りの様子を記したお便りがあり、見せていただきました。
「十七日…一年生のみの下校日でしたが、女の子が遠慮がちにハイタッチの真似をしてくれるようになりました。」
「二十三日…三人組の子どもたち、私に気付かないほど夢中にお話ししていて、通り過ぎたので、『さよなら』と声を掛けると、はっとした表情で振り返り、お辞儀をしてから駆けていきました。」など、温かく、優しく子どもたちを見ていただいている様子が、一筆一筆に心を込めた字で綴られており、目頭が熱くなりました。
また、その会では、「自分の子育ての時代を終えてみると、その時は大変だったけれども、子どもは、たとえ、よその子であってもみんなとても可愛いのです。この可愛い子どものために何かすることはないかと思い、できることしかできないのですが、健全育成の活動をしています。」と語られた方もいらっしゃいました。その方は、続けて、「点滅信号の所で、旗振り当番をしていて、青信号が点滅をしているのに、走って渡ろうとしていた子どもに注意をしたら、明くる日に、その子どもの親から、『うちの子をそんなことぐらいで叱るな。』と言われました。子どもは、『ごめんなさい。ありがとうございました。』ときちんと真剣な表情で言ってくれたのにね。でも、私はめげませんが、がっかりですね。」とも話されました。
私は、こうした話を聞いて、「人は人様(他人の尊敬語)に育てられ、人間になる。」という父からよく言われた教えを思い出しました。
昨今は、自分の子どものことを思っての言葉であるのにもかかわらず、人様の言葉に異を唱えたり、勘違いした守り方をしてしまったりすることがあり、難しい時代になりましたが、人様から叱られたり、褒められたりしながら、子どもは社会の一員として育つことを忘れてはいけません。
誰しも、自分の心の有り様は自分では作り出せません。自分の心の有り様は、周りの人たち、親も含めて人様が、自分をどのように映し返してくれているかに懸かっています。人は「人間」という言葉で示すように、人と共に生きる他はない存在であり、人様と共に生きることで幸せを感じ、健やかに育つのだと思います。
子どもは、私たちが知らないうちに、多くの人様に温かく見守られ、育てられていることに、その子どもに関わりのある大人はもっと寛容になり、有難く思う気持ちを持つ必要があるのではないでしょうか。