更新日:2019年11月7日
指定区分 県指定有形文化財
指定年月日 令和元年9月13日
所在地 香川県立ミュージアム(高松市玉藻町5-5)
解説
象谷は、江戸時代末期、高松藩主の御用を中心に活躍した漆工で、江戸や上方で蒔絵が主流とされる当時において、中国や東南アジア伝来の唐物漆器を探求し、自身の彫技を活かした独自の、彫漆、蒟醤、存清の漆芸技法を確立し、讃岐漆芸の祖として位置づけられる。
本作は、能楽好きであった10代藩主頼胤(よりたね)のために作られて以来、高松松平家の家蔵品として伝来する。象谷自身の筆になる制作記録「御用留(ごようどめ)」(高松市美術館蔵)によると、その工程で藩主頼胤による御覧が二度あったことなども知られ、本作に対する藩主の強い関心をうかがうことができ、大名道具資料としても貴重である。
本作は、長方形、印籠蓋(いんろうぶた)造りの鼓箱である。素地は木製で、総体に黒漆の下地を塗り、外面に堆朱の彫漆技法で意匠をあらわす。蓋表の中央に高松藩主松平家の家紋、三つ葉葵紋を大きく配し、周囲と蓋と身の側面に蝶、牡丹、菊の文様を密にあらわす。文様は朱漆の層を二段に彫り分ける二重彫りであらわし、上層を蝶と牡丹、下層を菊文様とする。
身の短側面に「賛岐象谷」の陽刻銘、底裏に「嘉永六年癸丑(みずのとうし)暮春 狩野親信(ちかのぶ)謹図永笑/玉楮為参謹鐫象谷」の線刻銘があり、嘉永6年(1853)に玉楮象谷が高松藩の御用絵師である狩野永笑(えいしょう)の図をもとに制作したことが判明する。
朱漆を何層にも重ね、上下段の構成に密な文様を配した本作は、象谷が得意とした彫りの技術を見ることができ、象谷の彫漆の遺例において、器体の銘記により制作年が判明する点で重要である。
さらに国内において制作された堆朱の遺例としても、象谷の作品は作者銘と年紀銘を有する最初期に位置づけられるものであり、日本における和製彫漆の進展を考えるに重要である。
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