高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.10 ここに境界線はない。/?
特別展
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、令和4年3月12日(土曜日)、13日(日曜日)、19日(土曜日)、20日(日曜日)、21日(月曜日・祝日)は臨時休館いたします。
高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.10 ここに境界線はない。/?
2022年2月11日(金曜日・祝日)から3月21日(月曜日・祝日)
「高松コンテンポラリーアート・アニュアル」は、独創性、将来性のある優れた作家を発掘、紹介する現代アートのグループ展として2009年のvol. 00 から始まり、11回目の今回は「ここに境界線はない。/?」をテーマとし、5人の作家を紹介します。
画材や制作方法、テーマやコンセプトが先進的であり前衛的な表現を追求するコンテンポラリーアートは、既成概念を覆し、心の内に引いていた境界線をなくしてくれる存在です。その一方で、社会や人々の意識の中に存在する不当な境界線を明らかにするものでもあります。
蛾や自身の身体をモチーフに、和紙を焦がして模様を描きだす手法で表現するウチダ リナ(1990年、東京都生まれ)は、本展では、和紙の作品にくわえて、自身の出自にまつわる出来事を平成という時代に投影させた物語を写真と映像作品で見せます。先史芸術や民俗芸術などを、インスピレーションの源に制作を続ける久保 寛子(1987年、広島県生まれ)の、身近な素材を用いた作品は新しい彫刻の可能性を提示します。潘 逸舟(1987年、中国・上海生まれ)のイサム・ノグチ設計のモエレ沼公園でのパフォーマンスをもとにした新作ビデオインスタレーションは、人工と自然、自己と他者、現在と過去の対比を想起させ、見る者の価値観を揺るがします。「大正生まれの架空の三流画家であるユアサ ヱボシ」として作品を制作するユアサ エボシ(1983年、千葉県生まれ)は、史実を下敷きにした虚構と妄想の世界に私たちを誘います。セクシャルマイノリティーをはじめとする多様性をテーマに、写真や映像、文章、パフォーマンスなど様々な手法で表現する森 栄喜(1976年、石川県生まれ)は、社会の中でかき消されてしまう「小さな声たち」を紡いだ音の作品を展示、その中で高松市在住の音響作家のばば まさみ(1995年、兵庫県生まれ)とのパフォーマンスも行います。
作家たちの独自の手法による作品に触れることで、様々な人、もの、ことを知らず知らずの内に分断する「境界線」を飛び越える手がかりを見つけることでしょう。
ウチダ リナ 《199○年》 2021年 技術協力:奥村 直樹
森 栄喜
「せっかちな未来 An Impatient Future」
[作・演出:森 栄喜、出演:森 栄喜、石倉 来輝(劇団ままごと)]
東京都写真美術館2018年上演風景
撮影:小山 貢弘(部分)
ユアサ エボシ《調査》 2020年 個人蔵
潘 逸舟《そこにない足跡-モエレ山》 (部分) 2021年
協力:さっぽろ天神山アートスタジオ
久保 寛子《オリオンの沈むところ》 (部分) 2021年 作家蔵
ウチダ リナ《みずとゆめ》 (部分) 2018年
作家蔵
久保 寛子《ブリコラージュの器物》 2017年 作家蔵
潘 逸舟《そこにない足跡-モエレ山》 2021年
協力:さっぽろ天神山アートスタジオ
ユアサ エボシ《GHQ PORTRAITS》 (部分) 2017年 作家蔵
展覧会基本情報
会期:
2022年2月11日(金曜日・祝日)から3月21日(月曜日・祝日)
休館日:
月曜日(ただし、3月21日(月曜日・祝日)開館)
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、
令和4年3月12日(土曜日)、13日(日曜日)、19日(土曜日)、20日(日曜日)、21日(月曜日・祝日)は臨時休館いたします。
開館時間:
午前9時30分から午後5時(入室は閉館30分前まで)
(ただし、金曜日・土曜日は午後7時閉館)
会場:
美術館2階展示室
主催:
高松市美術館
助成:
一般財団法人自治総合センター、公益財団法人朝日新聞文化財団、
公益財団法人野村財団、公益財団法人熊谷正寿文化財団
協力:
ANOMALY、ギャラリー小柳、KKAO株式会社、KEN NAKAHASHI、Yoshiaki Inoue Gallery
観覧料:
【一般】800円(640円)(注意)65歳以上も一般料金
【大学生】500円(400円)
【高校生以下】無料
(注釈1)( )内は20名以上の団体料金
(注釈2)身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳所持者(または障害者手帳アプリ「ミライロID」提示)は入場無料
お問い合わせ先:
高松市美術館
電話:087-823-1711
出品作家プロフィール&本展のみどころ
ウチダ リナ UCHIDA Lina
1990年、東京都生まれ。2013年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、卒業作品展買い上げ賞受賞。2016 年、東京藝術大学大学院美術研究工芸科染織専攻修了。和紙を焦がして色や柄を付ける手法で、和紙の素材を生かした繊細な立体作品を制作。近年の展覧会に、「素材転生―Beyond the Material」(岐阜県美術館、2021)、 個展「私はあなたと生きている」(gallery kogure[東京]、 2020) 等。
本展のみどころ
これまでウチダが取り組んできた和紙作品にくわえて写真や映像作品を展示します。平成2年に生まれたウチダが、生き別れた父親とそれにまつわる数奇な運命と自身の人生を、平成という時代に重ね、父親との記憶に関わるパブロ・ピカソ作《ピエレットの婚礼》と同じ青い色彩を基調とした映像で表現した新作を発表します。また作品に、声と引き換えに足を手に入れた人魚姫のビジュアルを取り入れて、「何かを引き換えにしてでも手に入れたい」という刹那的な価値観を表現するとともに、バブルとその崩壊を体験した平成という時代を象徴的に見せています。
(画像:ウチダ リナ 新作イメージ 2021年[199○年] 技術協力:奥村 直樹)
久保 寛子 KUBO Hiroko
1987年、広島県生まれ、現在も広島を拠点に活動。2009年、広島市立大学芸術学部彫刻科卒業。2013年、テキサスクリスチャン大学彫刻専攻美術修士課程修了。先史芸術や民俗芸術、文化人類学の学説を主なインスピレーションの源とし、生活に身近な素材を用いて作品制作を行っている。近年の展覧会に、「さいたま国際芸術祭2020」、個展「Wisdomof the Earth―大地の知恵―」(ギャラリーヤマキファインアート[兵庫]、2020)等。六甲ミーツアート公募大賞グランプリ受賞(2017)。
本展のみどころ
今夏テラスモール湘南(神奈川県)にて展示された9m超の大作《オリオンの沈む処》を再構成して展示します。久保が素材として使い続けているブルーシートで表現された円柱状の作品は、1つが3m超の3 つのパートに分かれ、それぞれが古代から未来までも巻き込んだ壮大な自然と人間の営みの物語を伝えます。また本作は日本の神話をモティーフに様々な作品を残した明治時代の油彩画家、青木繁(1882-1911)による《海の幸》(1904)へのオマージュであり、久保の新しい視点が感じられる作品です。
(画像:久保 寛子《オリオンの沈むところ》 (部分) 2021年 作家蔵)
潘 逸舟 HAN Ishu
1987年、中国・上海生まれ、9歳で家族に伴い青森県に移住する。2012年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。映像作品、インスタレーション、写真など様々なメディアを用いて、社会や他者と自己の関係性をテーマに制作している。近年の展覧会に「MOT Annual 2021―海、リビングルーム、頭蓋骨」(東京都現代美術館、2021)、個展「いらっしゃいませ、ようこそ」(神戸アートビレッジセンター、2020)等。日産アートアワード2020受賞。
本展のみどころ
2021年2月にモエレ沼公園(北海道)で行ったパフォーマンスを撮影した映像をもとに構成したビデオインスタレーション《そこにない足跡 / モエレ山》と、高松市内で撮影した写真作品《TIME AND SPACE / イサム・ノグチ作、1989年》を展示します。どちらも彫刻家イサム・ノグチ(1904-1988)の作品を着想の始点としており、過去に他者が手掛けた作品を、現在から解釈し制作することにより、これまで潘が取り組んできたテーマの1 つである取り組んできた自己と他者の問題や芸術そのものに切り込みます。
(画像:潘 逸舟《そこにない足跡 / モエレ山》 2021年 協力:さっぽろ天神山アートスタジオ)
ユアサ エボシ YUASA Ebosi
1983年千葉県生まれ。2005年東洋大学経済学部卒業。2008年東洋美術学校絵画科卒業。大学卒業後就職した会社の倒産をきっかけに、画家になることを決意し、34 歳頃から「大正生まれの架空の三流画家であるユアサヱボシ」という設定で、架空の略歴や綿密な設定の中でシュールレアリスムの影響を受けた表現を行う。近年の展覧会に、「still life 静物」(ギャラリー小柳[東京]、2021)、個展「侵入するスペクトル」(Akio Nagasawa Gallery AOYAMA[東京]、2019)等。第10 回絹谷幸二賞受賞(2018)。
本展のみどころ
「大正生まれの架空の三流画家であるユアサヱボシ」という設定で制作を始めた最初期の作品であり代表作である《GHQ PORTRAITS》(2017年)と新作を含む10点の絵画が出品されます。2017年の岡本太郎現代芸術賞に入選した「ユアサヱボシが、戦後日銭を稼ぐために進駐軍の米兵たちの似顔絵を瓦に描いた」《GHQ PORTRAITS》は、瓦150枚の全てを展示します。また、《調査》や《奇術師》といったシュルレアリスムの手法で表現されたユアサらしい作品のほか、「ユアサヱボシがともに活動した尊敬する画家である」山下菊二(1919-1986)の《日本の敵国米国の崩壊》(1943)を題材とした新作の自画像も紹介します。
(画像:ユアサエボシ《調査》2020年、個人蔵)
森 栄喜 MORI Eiki
1976年、石川県生まれ。2001年、パーソンズ美術大学写真学科卒業。写真家として活動する一方、近年は、写真表現だけでなく音声や映像を使用した作品を発表。近年の展覧会に、「フェミニズムズ/ FEMINISMS」(金沢21 世紀美術館、2021)、個展「シボレス|破れたカーディガンの穴から海原を覗く」(KEN NAKAHASHI[東京]、2020)等。第39 回木村伊兵衛写真賞受賞(2013)。
本展のみどころ
「人の傷つき」を主題にした新作を発表し、ジェンダー規範や様々なしがらみの中で、可視化されることのないままになってしまっている傷やそれをめぐる対話、ケア、回復を、ホーンスピーカーを複数組み合わせ空間を構成するサウンドインスタレーションで表現し、展覧会初日にはその中で音響作家のばばまさみとパフォーマンスを行います。また、本作にも参加協力している、男性の性被害について調査研究を行なっている宮﨑浩一(臨床心理士、公認心理師、立命館大学大学院人間科学研究科博士課程後期課程)との語り合いを書面で公開する予定です。さらに森の初めてのサウンドインスタレーションである《シボレス|破れたカーディガンの穴から海原を覗く》(2020)も展示いたします。
(画像:森 栄喜「せっかちな未来 An Impatient Future」[作・演出:森 栄喜、出演:森 栄喜、石倉 来輝(劇団ままごと)]東京都写真美術館2018年上映風景 撮影:小山 貢弘(部分))
出品作品《盗まれた傷たち|Stolen Scars》の関連資料:森栄喜と宮﨑浩一による往復書簡「盗まれた男性の傷たち」(PDF:712KB)
関連イベント
アーティスト・トーク
内容:
出品作家が自身の作品や制作について、トーク、ディスカッションします。
出演:
ウチダ リナ、久保 寛子、潘 逸舟、森 栄喜、ユアサ エボシ(潘のみ事前収録・映像出演)
開催日時:
2月11日(金曜日・祝日)
午後2時から午後3時30分(開場午後1時30分)
会場:
美術館1階講堂
定員:
先着40名(要申込)
受講料:
無料
申込方法:
お電話にて受け付けます。(087-823-1711)
1月21日(金曜日)午前8時30分から受付開始
森 栄喜パフォーマンス「盗まれた傷たち|Stolen Scars」
内容:
展示作品に合わせて、身体の動きと音を組み合わせたパフォーマンスを行います。
出演:
森 栄喜(出品作家)、ばば まさみ(音響作家)
開催日時:
2月11日(金曜日・祝日)
午後6時から午後7時
会場:
美術館2階展示室
参加料:
無料(要観覧券)
当日会場にお越しください。
ウチダ リナワークショップ「和紙でかたどるカタチ」
内容:
和紙を使って身近にある物を表現してみましょう!
講師:
ウチダ リナ(出品作家)
開催日時:
2月12日(土曜日)
午前10時から正午
会場:
美術館3階講座室
定員:
先着10名(要申込)
対象:
小学生以上
受講料:
500円
申込方法:
お電話にて受け付けます。(087-823-1711)
1月22日(土曜日)午前8時30分から受付開始
久保 寛子ワークショップ「ブルーシートで作ろう!瀬戸内の魚」
内容:
ブルーシートを素材にしてオリジナルのおさかなを作ってみましょう!
講師:
久保 寛子(出品作家)
開催日時:
2月13日(日曜日)
午後1時30分から午後3時30分
会場:
美術館1階講堂
受講料:
500円
定員:
先着10名(要申込)
対象:
小学生以上
申込方法:
電話にて受け付けます。(087-823-1711)
1月21日(金曜日)午前8時30分から受付開始
ミニコンサート
開催日時:
3月5日(土曜日)
午後1時30分から午後2時(午後1時開場)
会場:
美術館1階エントランス
演奏者:
辻 村彩、藤田 哲志(フルート)、若井 健司(テノール)、藤田 亜子(サックス)、大山 まゆみ(ピアノ)
曲目:
マシャイエキ作曲「決闘」、池辺 晋一郎作曲「軌道エレベーター」ほか
参加料:
無料
当日会場にお越しください。
ギャラリートーク
内容:
学芸員と美術館ボランティアciviメンバーが、展覧会のみどころと展示作品について解説します。
(注意)内容を変更する場合があります。
開催日時:
(学芸員)
2月12日(土曜日)午後2時~
(ボランティアcivi)
会期中の日曜日、祝日
各日午後2時~
会場:
美術館2階展示室
聴講料:
無料(ただし、観覧券は必要です。)
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