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讃岐漆芸について

香川の漆芸(讃岐漆芸)は、江戸時代後期に登場した玉楮象谷(たまかじ ぞうこく)によって始められ、「蒟醤(きんま)」、「彫漆(ちょうしつ)」、「存清(ぞんせい)」の三技法が確立されました。象谷の死後、弟の藤川黒斎(ふじかわ こくさい)は、蒟醤、存清の技法をもとに実用漆器の産業化をはかりますが、制作に手間がかかる事から粗製濫造に至り、明治末期には讃岐漆器の代名詞ともなった存清は姿を消します。それに代わり漆器産業の中心となったのは木彫りに彩漆を施した「讃岐彫(さぬきぼり)」であり、これらを扱う店「百花園( ひゃっかえん)」とその周辺からは石井磬堂(いしい けいどう)、鎌田稼堂(かまだ かどう)などの彫りの名手を輩出しています。讃岐漆芸中興の祖とも称される磯井如真(いそい じょしん)は、象谷や黒斎などの作品を通じて研鑽し、大正初期、「点彫り蒟醤(てんぼりきんま)」を創案し、奥行きと立体感を表現することに成功しました。また磬堂の内弟子であった音丸耕堂(おとまる こうどう)は、多彩な彩漆を用いて、優れた彫漆作品を生み出しています。1955年に重要無形文化財認定制度が制定され、彫漆で音丸耕堂、翌年に蒟醤で磯井如真が認定され、その後も、85年磯井正美(いそい まさみ)、94年太田儔(おおた ひとし)、2013年山下義人(やました よしと)がそれぞれ蒟醤で認定されています。また、日展では明石朴景(あかし ぼっけい)や真子実也(まなご じつや)がパネルやオブジェを制作し、室内装飾に新境地を拓いています。

讃岐漆芸の三つの技法

蒟醤きんま
漆の面に文様を彫り、その中へ朱漆または色漆を充填して平らに研ぎ出すものです。
この技法は明治時代に盛んに用いられました。1913年、磯井如真が考案した点彫り蒟醤が加わることで濃淡や奥行きのある表現が可能となりました。
彫漆ちょうしつ
漆を幾層にも塗り重ね、彫刻刀で模様を彫り表す技法です。朱漆を用いたものを「堆朱(ついしゅ)」、黒漆を用いたものを「堆黒(ついこく)」といいます。また、朱・黒・緑・黄・茶などの色漆を用いて模様を彫り分ける技法「紅花緑葉(こうかりょくよう)」などがあります。近年は、新しい顔料が開発され、様々な色漆を駆使した彫漆作品が作られるようになりました。
存清ぞんせい
存清は存星とも書かれます。この技法は漆面に色漆で模様を描き、輪郭などを線彫り、毛彫りしたもので、刻線に金箔または金粉を施すこともあります。