歴史よろず庵   〜 平成14年1月掲載分

   本ページは平成14年1月1日・15日発行の『広報たかまつ』に掲載したものです。


 

       厩図屏風 〜現代の厩舎とは違う?〜

 今年の干支にちなんで、馬が登場する屏風を紹介します。描かれているモチーフを見てみると、立派な厩につながれた馬たち、鷹と鷹匠(たかじょう)、犬やキジのほか、猿もいます。猿は古来より馬の安全と健康を守る動物とされ、厩には必須でした。また、前方の座敷では、囲碁や将棋を楽しむ人々の姿も見えます。
 厩というのは馬を飼うための小屋だと思っている現代の我々からは、すこし不思議な光景にみえます。しかし、室町時代から戦国時代にかけて、厩というのは馬を飼育する場所というだけでなく、自慢の馬を品評しながら娯楽に興じたりする社交の場でもありました。
 16世紀末ごろに来日したルイス・フロイスの『日本史』にも、「(安土城の厩は)きわめて清潔かつ立派なつくりで、馬を休息させるというよりは、むしろ身分の高い人たちの娯楽用の広間に類似していた」と書かれています。
 作者は、森直樹(1847〜1908)という人物で、幕末期には高松藩の御用絵師を勤めていました。本図は明治15年に制作されたものです。

※この作品は、1月26日(土)から歴史資料館で開催する特別展「近世の高松画壇」で展示します。この機会にぜひご覧ください。

厩図屏風 右隻
厩図屏風 左隻

平成14年1月1日掲載



 

       飲中八仙図巻

 中国唐代の詩人・杜甫(とほ/712〜770)の詩に、「飲中八仙歌」という七言古詩があります。題に「八仙」とあるとおり、本来は八人の酒好き仙人を詠んだものですが、杜甫が友人であった李白(りはく)のことを「皇帝に呼ばれても、酔ったまま知らん顔をして、『私は酒の世界の仙人だ』などと言う男だ」と詠んだことで有名になった詩です。
 本図は、それを絵画化したもの。道で麹(こうじ)を載せた車に出会ってよだれを流したり、仏画を前に断食と称して酔って居眠りしたり、大きな酒盃で吸いこむように飲んだりするなど、八人は様々な酔態を披露しています。ちなみに李白は、画面下段左端の三人がかりで抱えられている人物です。
 作者の長町竹石(ながまちちくせき/1757〜1806)は、江戸時代中期の高松城下南新町出身の絵師です。現在ではあまり知られていませんが、嘉永6年(1853)の「古今南画要覧/ここんなんがようらん」という南画画人の番付表では、最上段に与謝蕪村(よさぶそん)などとともに名を連ねていて、当時かなり有名な絵師だったことがうかがえます。
 山水画を得意とした竹石ですが、本図では軽妙なタッチで酔っ払った仙人たちを生き生きと表現しています。

※この作品は、1月26日(土)から歴史資料館で開催する特別展「近世の高松画壇」で展示します。この機会にぜひご覧ください。

飲中八仙図巻T
飲中八仙図巻U
飲中八仙図巻V
飲中八仙図巻W

平成14年1月15日掲載


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