高松の方言  【お】の項


言葉内容

おいこベベ(衣服)

子どもを背負った上にかける半天(はんてん)。「負い児ベベ(衣服)」の意味。東京では「ねんね(幼児)こばんてん」,略して「ねんねこ」とも呼ぶ。

おいでるか

@ご在宅ですかAお出かけになりませんか。二つの意味をもつ。「おい(在)でるか。」は相手の在・不在を確かめるとき,「お出(いで)るか。」は同行を誘いかけるときに,それぞれ使っている。

おいやん(人称)

おじ(伯,叔父)さん。そのなまり。

おうじょうする

困りはてる・まいる・閉口する。仏教からきた言葉の「往生(おうじょう)」から出たものらしい。往生とは,極楽浄土に生まれ変わること。一面,あきらめ,屈服することを伴なわせている。

おえさん(人称)

奥さん・おかみさん。大阪言葉の「お家(いえ)はん」がなまって伝わったものであろう。

おえん

らちがあかぬ。「お(終)えん」の意味。手におえないという表現であろう。

おおかために

もう少しのところ。「おおかた」は「大体」,「め」は「見当っているが,いま一息」という寓意を示したものといわれているが,はっきりしない。

おおける

おどろく・びっくりする。「怖(おじ)ける」のなまりではなかろうか。

おかぁ(人称)

お母さん。関東では「おっかぁ」という。

おかいれ(農事)

稲の収穫。水田から「陸(おか)に取り入れる」意味であろう。なお,取り入れの終わったあとの「内祝い」という意味にも通じている。

おかしげな

不思議な・妙な・変(へん)な。「不可思議(ふかしぎ)な」のなまりか。

おかしておれぬ

とてもおかしい・抱腹絶倒(ほうふくぜっとう)。おかしさにたえられぬこと。

おがす

盗む。「犯(おか)す」のなまりか。

おがす(農事)

田や畑を起耕する。土を掘り「起こす」という意味のなまりらしい。

おかもうけ

別途収入・臨時収入・定職以外から得た報酬(ほうしゅう)

おきゃくする

客を迎えて,ご馳走(ちそう)する。客を招くことである。

おくどさん(住居)

(かまど)。接頭語の「お」と接尾語の「さん」は敬語。「くど」は「火処(かど)」のなまりである。

おくもじ(副食物)

葉野菜(白菜,京菜,キャベツ)類のぬかみそ漬け。「お香文字(こうもじ)」のなまり。

おくり(仏事)

葬式・葬送。「野辺(のべ)の送り」という意味であろう。

おげる

無理をいう・だだをこねる・自慢をする。語源は明らかでないが,一説には,「驕(おご)る」のなまりであろうといわれている。

おけんたい

気兼ねなし。また,それを受けて,「大手をふって」とか「当然」とかいう場合にも使われているが,語源はわからない。

おけんと

おおよその・見当。「お」は接頭語。関東言葉の「当てずっぽう」と同義。

おこうずきん(衣服)

おこそずきん(高札頭巾)。そのなまり。江戸時代から明治にかけて流行したもの。その名の超こりは,日蓮宗高祖立正大師の木像にかぶせた「ずきん」に似ているところから生まれた。

おこした

寄せてきた・持ってきた。「寄(よ)こした」のなまり。

おごかれる

(しか)られる。「おごく」は「怒(おこ)る」こと。

おことい

いそがしい。大儀(たいぎ)な,骨がおれる,疲れたなどの意味にも通じさせる。「お事多い」のなまり。

おこよ

小便。「お小用(こよう)」のなまり。

おしたし

醤油(しょうゆ)。別語の「お下地(したじ)」のなまり。

おじやん(人称)

お祖父(じい)さん。そのなまり。対語に,「おばやん」がある。

おじゃも

化物(ばけもの)。接頭語の「お」は畏称,「じゃも」は「邪者(じゃもの)」のなまり。

おじゃみ(玩具)

お手玉。「お」は美称。「じゃみ」は,お手玉をとるとき,中味のあずきのすれあう音感から生まれた呼び名であろうといわれている。

おじゅつさん(職業)

お寺の住職。「お住持(じゅうじ)さん」のなまり。

おしょう

先輩・兄貴(あにき)。先輩には敬称,同輩には愛称となる。男らしい男という「男性(おしょう)」からでている。「ねしょう」を見よ。

おじょも

怪奇伝説に現われる,巨人。「じょも」は,「邪者(じゃもの)」であろう。なお,「まのもん」,「魔の物」ともいっている。

おしろ

うしろ(背後)。「う」が,「お」になまったもの。

おじる

(おそ)れる。「怖(お)じる」の意味であろう。

おせ

大人(おとな)。子どもに対している。接頭語の「お」は敬語,「せ(兄)」は成人男子という意味。

おたぁさん(人称)

おかあさん。そのなまりという説と,「おたぁさま(母君)」を語源とする説とがあり,どちらとも決しかねる。

おたし

自分・私。共通語の「わたし」が,「おたし」になまったものであろう。なお,東京では「あたし」という。

おただ

お菓子を添えないお茶。お茶だけの供応という意味。「ただのお茶」をつづめたものであろう。東京では,「空茶(からっちゃ)」といっている。

おたゆうさん(職業)

神職(神主,神官,宮司)。昔,社格の高い神社の神官が,諸大夫(しょだいぶ),俗称「たゆう」の職にのぼったことから,のち,一般神職に対する敬語として,「お太夫さん」が生まれたものであろう。

おたの(動物)

たぬき。「たぬき」が,「たのき」になまり,さらに,接尾語の「き」が消え,かわって「お」の敬称がつけられたものであろう。
たぬきに敬語はおかしいが,化かされたり,崇(たた)られたりしないよう,恐れた結果と考えられる。

おちくずれる

落ちる・落ちてくる。「くずれ落ちる」ことをいったものであろう。

おちゃまま(食事)

お茶づけ・茶めし。「お茶まま(飯)」であろう。

おちらし(菓子)

(い)り麦紛(むぎこ)。大阪では「はったいの粉」,東京では「麦粉菓子(むぎこがし)」という。おちらしは,粉(こな)で散りやすいという意味であろう。

おつい(調味料)

しょう油。「おつゆ」のなまり。

おつう

澄し汁(すましじる)。「おつゆ(露)」のなまり。

おっかん

表通り・本通り・主要道路。「往還(おうかん)」のなまり。東京などでは「往来(おうらい)」と呼んでいる。

おっきょい

大きい。そのなまり。「おっきい」は,全国共通語。

おっじゃ

雑炊(ぞうすい)。「おじや」の意。

おつべ(人体)

おしり。「つべ」は古語。転じてシリを指すようになったものであろう。大阪では「おいど」という。

おてっしゃ

小皿。「お手塩(てしお)」のなまり。「お」は美称,「てっしょ」は手塩皿の略。江戸時代に,膳部を浄(きよ)めるため,小皿に塩をもって出したのが手塩皿の起こりである。東京言葉で「おてしょ」という。

おとう(人称)

おとうさん。語尾の敬語「さん」を略したもの。

おとこし(人称)

(おっと)・主人。妻が配偶者をさしていう。「男主(おとこしゅ)」がなまったものであろう。

おとろしい

(こわ)い。「恐ろしい」がなまったもの。

おとっちゃま

こわがりや・臆病者(おくびょうもの)。子どもにいう言葉。恐ろしがるさまをたとえたものであろろう。

おどれが

「おのれが」のなまり。相手をみくびった,荒々しいことばである。

おとましい

わずらわしい・めんどうな・やっかいな。「疎(うと)ましい」と同義。

おどし

案山子(かかし)。「威(おど)し」「鳥をおどかす道具」という意味であろう。東北地方では,「鳥おどし」というところもある。

おどろく

目がさめる。夢をみているうち,何かに驚いて,ハッと目がさめるということではなかろうか。

おとんぼ(人称)

(すえ)っ子。兄弟姉妹のうちの,最年少者をさしていう。接頭語の「お」は敬称,「とんぼ」は「すえ」の意味。

おなぎ(魚類)

「鰻(うなぎ)」のなまり。

おなごしゅ(人称)

自分の妻・女房・家内。「女子主(おなごしゅ)」の意味で,女主人(おんなあるじ)や,女子衆(おなごしゅう)ではない。

おなめ(動物)

牝牛(めうし)。子を生んだとき,よく舐(なめ)るので,この言葉が生まれたといわれている。なお,一部では,これを子牛のこととしている。

おねば(植物)

発芽後,早期に間引きした大根(だいこん)の若葉。「お」は美称,「ねば」は根葉で,小さい根つきの葉という意味。

おばあん(人称)

おばあさん。そのなまり。

おはようござんした

おはようございます。接尾語の「した」は,過去詞でちょっとおかしいが,そこが,この言葉を採りあげるよりどころとなった。

おびい(魚類)

さかな。子ども用語。「お」は美称,「びい」は魚の別称。「び」に余韻(よいん)の「い」をつけ加えたものであろう。

おひなる

お起きなさい。「おひなり」ともいう。日が高くなったからという意味か,大阪言葉をうけて「起きなはれ。」のなまりか,よくわからない。

おぶぎ(衣服)

「産着(うぶぎ)」のなまり。

おふくさん(動物)

お正月に出るネズミ。ネズミは大黒天,福の神のお使いといういい伝えから,昔は,正月のネズミを「お福さん」と愛称したといわれている。

おへつ

追従(ついしょう)・おもねり・へつらい・お世辞。「へつらい」の「へつ」に,「お」の接頭語をつけたものである。

おほける

驚く・びっくりする。「ほおける」のなまりといわれているが,はっきりしない。関東では,「たまげる」という。

おまはんく

お宅。「おまはん」は「あなた」で,大阪言葉に同じ。接尾語の「く」は,戸に通じ,家をさしている。

おみやさん

神社・やしろ。「お宮(みや)」に,「さん」の敬称をつけたもの。

おむし(調味料)

味噌(みそ)。原料の麹(こうじ)と大豆に塩を加え,桶に容れて味をならす。その「ならす」ことを「蒸(む)す」といい,「お」の美称をつけたものである。

おむすさん(人称)

お嬢さん。「むす」は,「娘」をちぢめたものだが,最初と最後に「お」と,「さん」の敬称をつけたのは,すこし丁寧すぎる。

おもっしょい

「おもしろい」のなまり。別に,「おもろい」ともいっている。

おもや(住居)

本家。讃岐では,新家(しんや)・分家の対称につかわれる。全国共通語の母屋(おもや)は,同じ屋敷内にある本宅をさし,はなれ(離室)と区別する。

おもれる

物がむれて腐(くさ)る。「お」は接頭語,「もれる」は「蒸(む)れる」のなまり。

おやす

(す)る。「鑢(やすり)」からでた「やす」であろうといわれている。
例 「墨(すみ)をおやしてくれ(すみをすってください)。」

おやっさん(人称)

父。「親父(おやじ)さん」のなまり。

およそ

でたらめ・いいかげん。「おおよそ」のなまり。つまり,不正確をなじる言葉。

およる

寝ている・眠っている。夜は就寝するものという定義感から,それを動詞化して,「お夜(よ)る」とよんだのかもしれない。

おらぶ

さけぶ・怒鳴(どな)る。

おれん

耐えられない・がまんできない。
例 「だまってはおれん(だまっていられない)。」

おわいごく

子どもの遊びの追いかけごっこ。「追い合いごと」のなまりであろう。

おんごろもち(動物)

もぐら。「もんぐらもち」がなまったものらしい。

おんびき(動物)

がま。別名をひきがえるともいう。おんびきは,動作のおだやかなという意味で,「隠(おん)びき」という。

おんまつ(植物)

黒松。「おん」は「雄(お)」のなまりで,「雄松(おまつ)」。雄松は黒松の別称。



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第05項
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