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令和3年10月

更新日:2021年10月14日

教育長ひと言

教育長が、教育に関する想いを「この月に想う」と題して綴ったコラムです。

「十月に想う」 共に在る、すずめと子どもたちの物語

 実りの秋を迎えました。野山には果実や木の実が豊かに実り、田や畑も収穫の最盛期となりました。色付く稲穂を見ると、小学2年生の子どもたちと一緒に、校庭の小さな田んぼで稲を育てたことを思い出します。苗作りから田植え、草取り、稲刈りなどの米作りに取り組み、一粒のお米を育てるのに、「米」と言う字が示すように88もの大変な手間がかかることとともに、「共存」というとても大切なことを学ぶ機会となりました。
 稲の穂が頭を垂れ始めたある日、子どもたちが血相を変えてやって来ました。すずめがチュンチュン鳴くように、「どうしょう、どうしょう。」「先生、先生、すずめが、私たちが育てているお米を食べている。」と私に訴えました。すずめは、固く実った稲を食べるのではなく、その前のまだミルク状の時に、食べに来るのですが、春から夏にかけては害虫や田の雑草の種も食べてくれますので、そのお礼に、お裾分けだとも考えられます。しかし、子どもはそのようなことは知りません。そこで私は、子どもの訴えを良い教材を提供してくれたと考え、まず、様子を見に行くことにしました。すると確かに、たくさんすずめが、稲穂にとまって実をついばんでいるのです。「すずめは何と言いながら食べているかな。」と聞くと、「お腹がぺこぺこだったので、とってもおいしい。」「甘くて旨いなあ。」などと次々と言葉が返って来ました。
 みんなで、どうしたらいいかを考えました。「網をかける。」という意見は、すずめが引っかかると可哀そうということで、キラキラのテープを張ることと、案山子を作ることになりました。十字の棒に服を着せる手順などに悪戦苦闘しながら班毎に作った案山子を田の中に立て、周辺にはキラキラのテープを張りました。そして、案山子が立てられ、キラキラとテープが眩しい自分たちが育てた稲が実る田を、少し離れた場所で子どもたちと一緒に眺めました。子どもは「これで、育てた稲が食べられない。」と大満足です。
 そこで、もう一度、すずめの鳴き声に耳を澄ませました。「何て言っている。」「田んぼに人がいるみたいだから、近づけない。」「おいしい稲が食べられなくて残念。」と、してやったりという顔でした。そこで、私は、最初にすずめの声を聞いた時から、悩んでいたある子どもを指名しました。彼女は、「私たちが育てた稲は食べてほしくないけど、稲を食べられないと巣で、お腹をすかして待っている赤ちゃんすずめにあげるエサがなくなる、困ったなあ。」と、悲しげにつぶやいたのです。子どもたちに沈黙が流れました。しばらく間を置き、「どうしょうか。」と問いかけると、「給食のパンを残してあげたらいい。」「草の種を取ってきてあげよう。」などの意見が出、すずめが害虫などを食べてくれていることも話し、すずめのためにエサ台を作ることになりました。エサ台には、「すずめさん、私たちの稲は食べないでね。この台にあるエサを食べてね。」と書かれたプレートを貼りました。うっすらと白い雲が浮かぶ青空が、とても高く見えました。
 今、世界中の至る所で、自分の意見と合わない、自分の考えに沿わない人を、攻撃し、正しいのは自分しかないとする風潮が見られ、争いや、誹謗中傷が絶えません。こうしたことは私たちの身近な所でも見られ、少なからず子どもにも影響を及ぼしています。異なる者同士が互いの存在を認め合い、共存し、共生していくことの価値や喜びを、子ども時代から、考え、味わうような体験が必要だと思います。

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