●「日仏交流とおもてなし」(12月1日号掲載分)

 「トレビアン(素晴らしい)」と来高した多くのフランス人からお褒めの言葉をいただきました。10月末に本市で開催された「第4回日仏自治体交流会議」についてです。日仏間で姉妹都市縁組みをしている自治体の代表者が一堂に会する会議で、フランス側17、日本側28の計45自治体という過去最多の参加を得ることができました。期間中は、天候にも恵まれ、栗林公園や屋島、また直島への視察などで、高松市と周辺地域の自然や文化、生活の豊かさや魅力に十分触れていただけたものと思います。会議では、「グローバル時代において、地域経済の活性化を図るために自治体は何をなすべきか」を全体テーマとして、「産業」、「文化」、「都市開発」の3つの分科会で都市の持続可能な発展に向けた方策などについて活発な議論が展開され、合意内容などを集約した「高松宣言」が採択されました。
 日本とフランスは、遠く離れ、自然環境や国民性、政治制度や生活習慣なども大きく異なります。しかし、そのメンタリティーにおいて、互いに引きつけられ、親近感を感じる部分も大いにあるように思います。特に芸術と料理(食)の分野においては、価値観を共有していると言っても良いほど、感性が通じ合うところがあります。今回も、直島の現代アートや招宴における地元の旬の食材を使った和食などは、言葉など全く必要無しでフランス人の心をがっちりとつかんだようでした。
 19世紀フランスの名著「美味礼讃(びみらいさん)」に書かれてある食に関する格言の中の一つに、「だれかを食事に招くということは、その人が自分の家にいる間じゅうその幸福を引き受けるということである」(注)とあります。これなどは、日本の「おもてなし」の心に通じるものではないでしょうか。今回の会議においても、この「おもてなし」の心を大切にしながら運営を執り行ったことが、日本人、フランス人双方に通じて高い評価を得られたのだと思います。
 この日仏自治体交流会議の成功は、高松市に大きな自信を与えてくれました。自然、経済、文化がそれぞれに魅力的で高いレベルで融合調和しているという評価もいただき、「世界都市TAKAMATSU」としての第一歩を踏み出せたようにも思えます。
 (注)「美味礼讃」(ブリア・サヴァラン著 岩波文庫)

●「秋の月」(11月1日号掲載分)

 月が一番美しいのは秋だ、ということは多くの人が認めるところでしょう。季語でも、単に「月」と言えば秋の月を指すそうです。旧暦8月15日が十五夜で「中秋の名月」、旧暦9月13日が十三夜で「後の月」と言われ、これらの名月を愛でる風習が日本の各地に残っています。空気が澄み切った秋の空に、浮かぶ月はしっとりして幻想的な雰囲気を醸し出し、想像力をかき立てます。日本最古の物語と言われる「竹取物語」で、かぐや姫が月に帰って行くのも旧暦8月の満月の夜です。
 今年の十五夜(9月8日)はお天気もよく、高松市内においてもあちこちでお月見が楽しまれたようです。栗林公園の掬月亭で開催された観月会に参加した知人によると、空の月がきれいであったことはもちろん、和船に乗り、見た南湖の水面に映った月がまた風情があり、名月を何倍にもして楽しめて良かった、とのことでした。まさに「水を掬すれば月手に在り」という言葉から付けられた、施設の名のとおりの趣のあるお月見となったようです。ちなみに、京都の観月の名所で詠まれた崇徳上皇の御製に「うつるとも月もおもはず うつすとも水もおもはぬ 広沢の池」という歌があります。水に映った月は、「無心の境地」を象徴するもので気分を落ち着かせます。
 十五夜の次の日は今年三度目のスーパームーンでした。月が地球に近づき大きくなるスーパームーンはほぼ毎年見られますが、今年ほど接近するのは、次は20年後になるということで、非常に貴重なものでした。また、10月8日には皆既月食も各地で観察することができました。
 月は地球の唯一の衛星で、その存在は潮の満ち引きなど物理的な現象にも影響を及ぼしています。その月に人類が最初に降り立ったのが1969年。あれから45年が経過し、月に関する科学的知見は大きく進歩しました。でも、日本人が秋の月を眺め、愛でる気持ちというものは、かぐや姫の昔からあまり変わっていないように思います。
 秋も深まってきました。月をイメージした音楽でも聴きながら、秋の夜長をゆったりと過ごしてはいかがでしょう。私が選ぶとすれば、ドビュッシーのピアノ曲「月の光」か、ジャズの名曲「ムーンライト・セレナーデ」といったところでしょうか。

●「高松の伝統的ものづくり」(10月1日号掲載分)

 今年3月に「高松市伝統的ものづくり振興条例」を施行しました。お手本は、金沢市のものづくりに関する施策です。金沢市には、加賀友禅や九谷焼をはじめとして国指定の伝統的工芸品が6種類もあります。しかしながら、バブル崩壊後の不況の影響もあり、これらの生産額は大きく減少し、後継者不足も顕著になってきているそうです。そんな中、金沢市では、1989年から伝統産業の知識、技術を習得しようとする人と事業所に、資金を交付する「金沢の技と芸の人づくり奨励金」制度を設けています。そして2009年には「金沢市ものづくり基本条例」を制定し、同年にはユネスコのクラフト創造都市の登録も果たしています。
 本市に関係する国指定の伝統的工芸品は、「香川漆器」の1種類だけで金沢市ほどの厚みはありません。それでも、香川県の指定する伝統的工芸品38品目は全国的に見ても豊富で、讃岐桶樽、欄間彫刻、菓子木型などの木工品をはじめとして、高松張り子、讃岐のり染、保多織など20種類以上の伝統的ものづくりが、高松市内で現在も連綿と受け継がれています。
 中でも、高松藩の漆彫司(うるしほりし) 玉楮象谷(たまかじぞうこく)に始まり、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)など独自の技法を伝える香川漆器、世界で最も固くて美しく高価で、花崗岩のダイヤとも呼ばれる庵治石製品、また、工芸品ではありませんが、全国生産の8割のシェアを誇り、JETROの輸出支援の加速的重点プログラム10品目に入った(松)盆栽の三種のものづくりは、貴重な地場産業でもあります。その振興には課題も多くありますが、「『日本のものづくり』が素晴らしいと国内はもちろん世界で再注目され、若いクリエーターやファッション業界など流行を生み出す市場に新しいコラボ商品が誕生」(注)するような嬉しい動きもあるようです。
 ものづくりはその街の文化です。そして、創造都市とは、創造的な文化活動が革新的な産業活動と連環してまちの活性化を実現している都市のことです。であるならば、創造都市推進の柱として、高松の伝統的ものづくりの振興に、大いに力を傾注していくべきであると考えています。
(注)調査月報2014・8月号「香川の伝統工芸品の未来を見据えて」(株式会社tao.代表取締役 久保 月)

●「瀬戸の都のウォーターフロントのにぎわい」(9月1日号掲載分)

 この夏、瀬戸内海国立公園指定80周年記念として、県を主体とした実行委員会主催の香川ウォーターフロントフェスティバルが開催され、サンポート高松周辺は大変にぎわいました。メインイベントは、海水を吹き上げて作られた巨大なウォータースクリーンでの映像作品の上映です。平家物語の源平屋島合戦を題材にした作品、スマートフォンをリールに見立て、ぐるぐる回しながら魚を釣り上げるゲーム感覚の作品、『美』の書を水の空書に仕立てたもの、それに無数のカラスが飛んで色彩豊かな花に変わるデジタルアートの新作が海上で展開されました。
 作品を制作したチームラボ代表の氏によると、高松の海でやるからこその意義があるものにしたいと考えた、ということです。まさに、源平屋島合戦は、約830年前にこの海で繰り広げられた場面を現代に再現したもの。ダイナミックな映像に最後は琵琶の音色が流れ、「もののあはれ」さえ感じることのできる作品でした。また、大人も子どもも夢中になった釣りゲームで、最後に釣り上げられる妖怪魚のもこの海の歴史につながっています。保元の乱に破れて讃岐に流された方の武士 父子が瀬戸内海で激しい嵐に襲われた時、上皇の(神の使者)である鰐鮫と白いが現れて彼らを救った、という言い伝えがあるのです。このように、その場所の持つ歴史性と特質を十分に踏まえ、高度な技術を駆使しながらアートとエンターテインメントを見事に融合し、優れた作品に昇華させたチームラボの創造性に脱帽し、感謝します。
 サンポートのベイエリアで同時期に開催された、音楽と食と大道芸のイベント「真夏の夜の夢 THE CARNIVAL」も大好評でした。ステージでは音楽やパフォーマンスの楽しいショーが繰り広げられ、美味しい料理と飲み物を提供する屋台が並び、大道芸の達人達が雰囲気を盛り上げました。「高松は文化度が高く、地方都市の港でこの夜のにぎわいは素晴らしい」という県外客の声も聞かれました。
 あのウォーターフロントの心地良い喧噪が一過性の夏の夜のはかない夢に終わらないよう、今後の継続した展開について、関係者と相談してまいりたいと思います。

●「見守りと居場所づくり」(7月1日号掲載分)

 昨年度の香川菊池寛賞の受賞作「光りの地図」(渡邊久美子作)は、一人暮らしの認知症の母を介護するため、仕事を辞めて単身ふるさとに帰り、最後を看取る男性が主人公の話でした。テーマの設定に今日性があり、身近な話として多くの共感を得たことが、受賞につながったようです。
 「介護の2025年問題」というのがあります。最も世代間人口の多い、いわゆる団塊の世代が全員後期高齢者の仲間入りをする年を、いかに持続可能で安定した制度の下に迎えられるかという問題意識です。課題は多々ありますが、高齢者が自分の望ましいライフスタイルを保ちつつ、住み慣れた地域で適切なケアを受けながら人生を全うできることが大切です。そのため、家族、親族、近隣の可能な世話や介護に組み合わせて、地域包括支援センターが中心となり、住まい、医療、介護、介護予防、生活支援などのサービスを一人ひとりの状態に合わせて、切れ目なく効果的に提供していくシステムの構築が求められています。そして、このシステムをより有効に機能させるために、現在、本市が力を入れて進めているのが、「見守り」と「居場所づくり」事業です。
 「見守り」は、高齢者の孤立を防ぐ取り組みとして重要です。これまでの民生委員による訪問や水道検針事業者による活動を大幅に拡充して、新聞配達業者や金融機関、宅配事業者など27事業者と新たに見守り活動に関する協定を締結し、約4000人の協力訪問員が確保されています。協力訪問員の緩やかな見守りと民生委員による見守り、それに定期的なしっかりとした見守りの三層構造により、高齢者に対する地域の目を光らせてまいります。
 「居場所づくり」は、高齢者の引きこもり防止や健康づくり、生きがい対策として重要です。高齢者の身近な居場所となる拠点を、概ね徒歩圏内で1か所を目安として、市内に300か所程度順次整備したいと考えています。介護予防ボランティアや認知症サポーターなどに、居場所のお世話役となってもらい、高齢者の新たな地域貢献の拠点ともなり得ます。特にU、J、Iターン者も含む多様な能力を持つ元気な団塊の世代の人たちに、大いに活躍していただきたいと期待しています。

●「子どもと読書」(6月1日号掲載分)

 その映画は、題名どおり心に「じんじん」きます。絵本の里として町おこしをしている北海道を舞台に、父から子への絵本の読み聞かせをモチーフにして作られた映画「じんじん」です。この映画の自主上映会が、去る4月6日に高松テルサホールでありました。そして、主催者から依頼を受けて、上映終了後、私がこの映画から生まれた絵本「クロコダイルとイルカ」を朗読しました。子どもが小さい頃、寝る前に絵本の読み聞かせをしていたのを思い出しながら、あらためて、子どもの読書習慣の重要性を再認識する機会となりました。
 ブックスタートという事業があります。赤ちゃんとその保護者に、絵本や子育てに関する情報などが入ったパックを手渡し、絵本を介して心触れ合うひとときを持つきっかけをつくってもらう事業です。1992年にイギリスのバーミンガムで取り組みが始まり、高松市では2002年から事業を行っています。ちょうど人の声などに注意し始める時期の4か月児とその保護者を対象に、4か月児相談の際に、図書館員とボランティアが協力して、説明をしながら絵本一冊を含む「ブックスタート・パック」を手渡しています。
 読み聞かせは、子どもの読書習慣への誘い役となります。食事の正しい習慣を身につけさせるため、食育を施すように、正しい読書習慣を身につけさせるために、本を読み聞かせて本に親しむよう仕向けることは、子どもの健全育成にとって非常に重要なことだと思います。
 2001年に制定された「子どもの読書活動の推進に関する法律」においても、「子どもの読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」で、「そのための環境の整備が推進されなければならない」とされています。
 本を読むことは心の栄養をとることです。読み聞かせをする、本を読む、図書館を活用する、ということを特別に考える必要はなく、衣や食と同じ感覚で捉えることが大事です。食べ物を食べていないとおなかがすくように、本を読んでいないと飢えを感じるような生活習慣を、小さい頃から身につけておきたいですね。

●「創作オペラと現代サーカス」(5月1日号掲載分)

 この5月、高松で創作オペラと現代サーカスが相次いで公演されます。
 まず、創作オペラ。サンポートホール高松の開館10周年記念企画提案事業としてオペラ「扇の的」公演が選定され、5月17日(土)と18日(日)に上演されます。源平屋島合戦の中で最も有名な、那須与一が扇の的を射る場面を題材にした新作オペラです。台本や作曲・演出を高松出身者または在住者が手掛け、公募した出演者も香川ゆかりの実力者を揃えた、まさに地産地消の本格オペラとなっています。主役は扇を持った平敦盛の妻、葵。死を予感し滅びゆこうとする平家の女人達を中心に、弓の名手・那須与一、源氏の大将・義経らを絡めた物語をオール讃岐キャストで歌い上げ、舞台を盛り上げていきます。
 オペラの語源はイタリア語で、仕事とか作品を意味します。そして、創造的な協働作業を「コ・オペラ」とも言うそうです。「扇の的」は、まさに市民の「コ・オペラ」により作り上げられる芸術作品です。創造都市高松の一つの成果として、記念碑的な作品になることを期待しています。
 そして現代サーカス。高松国分寺ホールの開館1周年記念も兼ねて、日仏共同創作公演「キャバレー」が5月23日(金)から25日(日)までの3日間開催されます。主催は瀬戸内サーカスファクトリー。率いる田中未知子さんは、北海道から香川に来て、瀬戸内の自然や伝統芸能などが息づく風土に接し、この地で現代サーカスの拠点をつくりたいと考え、活動をしている方です。今回はフランスのサーカス集団カンパニー・リメディアが、アジアツアーの合間にさぬき市の中学校跡施設で日本のアーティスト達と滞在制作をして本番公演に臨みます。「サーカスっていうより演劇的フィジカルシアターといった感じ」だそうですが、芸術性の高いフランス現代サーカス(シルク)の魅力を存分に味わってほしいと意気込んでいます。
 サーカスの語源はラテン語で、円周とか回転を意味します。どの観客席からも見渡せる「輪」ということです。高松発の現代サーカスの新しい輪が幾重も放たれ、大きく広がっていくことを夢見ています。

●「電車・バスを利用して健幸都市に」(4月1日号掲載分)

 「いかに公共交通が再整備されるか、これも健幸都市を実現するための大きなキーワードになる」と、「都市の健康」をテーマに昨年10月に大分市で行なわれた都市問題会議でコーディネーターを務められた久野譜也筑波大学教授は指摘されています。
 まさに我が意を得たりで、高松市のまちづくりの方向性も同じです。昨年9月には全国でもまだあまり例のない「公共交通利用促進条例」を公布・施行しました。これまでの拡散型のまちづくりを集約型に転換しながら公共交通網を充実させ、人口減少、超高齢社会においても活力を維持し、人・まち・社会が健康である都市でありたい、と願う気持ちからです。公共交通が衰退すると交通弱者の急増をはじめ、環境問題の悪化、中心市街地の空洞化など、地域社会そのものが大きく衰退しかねません。そうならないように、みんなで公共交通の利用促進を図ってより充実させる好循環を作り出そう、というのが本条例の趣旨です。公共交通を子ども達が利用することで、公共道徳を養う機会となることも期待できます。
 利用促進の第1弾の取り組みが3月1日から始まっています。ことでんの電車とバスの乗り継ぎ割引が、「20円」から「100円」に大幅に拡大しました。乗り継ぎにより、バスの初乗りが160円から回数割引も含めて50円になります。100円で運行しているまちバスなどは、電車から乗り継ぐ場合は実質無料です。
 さらに秋ごろを目途に、70歳以上の市民を対象として、イルカカードが利用できる全ての公共交通機関の料金が半額となる、新しいカードを発行する予定です。交通弱者である高齢者の足の確保とともに、高齢者の自動車運転による事故のリスクを減らし、外に出て歩くことで健康増進につながることを大いに期待しています。
 いよいよ新年度が始まります。通勤の定期を新たに求める方も多いでしょう。電車の定期イルカを持っている人は、いつでも全てのバス利用が100円引きになります。
 皆さん、是非ともこの機会に、電車やバスなどを利用して健幸都市づくりに参加しませんか。

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